← 資料・解説

手法

幾何減衰型​アドストック

広告は​配信後も​効果が​残る​ことがあります。
​幾何減衰型​アドストックは、​今週までに​蓄積した効果の​一定​割合が​翌週に​残り、​時間とともに​減っていく​様子を​表します。

6 分で​読めます · 更新日 2026年9月7日

横に​スクロールして​図全体を​ご覧いただけます。

効果が半分0246810120%50%100%出稿からの経過週数残存する効果λ = 0.3・半減期0.6週λ = 0.6・半減期1.4週λ = 0.85・半減期4.3週
ある週の​広告効果が​k週間後に​どれだけ​残るかを、​3つの​減衰率で​比較。
​点は​効果が​半分に​なる​半減期です。
​検索広告は​速い​減衰、​テレビは​遅い​減衰に​近い​傾向が​あります。

どのような​手法か

アドストックは​広告効果の​持ち越しです。​購入した​インプレッションの​効果の​うち、​出稿した​週より​後に​現れる​部分を​表します。​幾何減衰型は​1つの​パラメーターで​表現し、​前週までに​蓄積した効果の​一定割合λが​毎週​残ります。​単一週の​広告費の​効果は、​λ、​λ²、​λ³と​減衰します。

adstock(t) = spend(t) + λ × adstock(t − 1)

λは​0から​1の​間です。​0なら​効果の​持ち越しは​ありません。​0.9なら​1週間後にも​90%が​残り、​余韻は​数か月に​及びます。

メディアプランに​必要な​理由

2つの​判断に​関わります。

1つは​効果の​帰属です。​第10週の​テレビ広告が​第11〜14週の​売上に​つながっても、​持ち越しを​考慮しない​モデルは、​その​期間に​動いていた​検索広告やリターゲティングに​売上を​割り​当てます。​テレビが​弱く、​検索が​強く​見え、​その​誤りが​予算配分に​つながります。

も​う​1つは​出稿の​リズムです。​効果が​長く​残る​チャネルは、​集中出稿の​合間を​残存効果で​補えます。​残らない​チャネルは、​需要が​ある​ときに​出稿する​必要が​あります。​週ごとの​配分は、​総予算だけでなく​減衰率にも​左右されます。

仕組み

λは、​効果が​半分に​なるまでの​週数​「半減期」に​すると​理解しやすくなります。

half-life = −ln(2) / ln(λ)
λ 半減期 チャネルの​例
0.3 0.6週 検索、​メール、​アフィリエイト
0.5 1.0週 ソーシャル広告、​リターゲティング
0.7 2.0週 ディスプレイ、​ラジオ、​オンライン動画
0.85 4.3週 テレビ、​屋外広告
0.9 6.6週 スポンサーシップ、​紙媒体

ベイズモデルでは、​減衰率に​事前分布を​設定します。​チャネル​特性の​知見が​あれば、​比較的強い​事前分布を​使えます。​テレビの​半減期を​2週間と​想定するなら、​0.7付近を​中心と​する​ベータ分布を​置き、​データで​調整します。​知見が​なければ、​弱情報事前分布Beta(2, 2)が​出発点に​なります。

残存効果を​何週で​打ち切るかと​いう​最大ラグも​必要です。​デジタルでは​8週、​複数媒体を​含む計画では​13週程度。​20週以上は​テレビや​屋外広告が​中心の​場合に​検討します。​ラグを​倍に​すると、​学習時間も​おおむね倍に​なります。

アドストックは​飽和より​先に​適用します。​飽和するのは​単週の​広告費ではなく、​蓄積された​効果です。

Kuwalystでの​使い方

自社データに​基づくプランでは、​チャネルごとの​減衰率と​元の​事前分布を​モデルの​説明資料に​保存します。​反応曲線や​週ごとの​配分提案は、​この​減衰率を​もとに​作ります。

履歴の​ない​ブランドは、​ベンチマーク集の​チャネル別事前分布を​使い、​ベンチマークと​明示します。​借用した​減衰率と、​それを​置き換える​ために​必要な​履歴や​実験も​示します。

注意点

減衰と​飽和は​互いを​補ってしまいます。​長い​残存効果と​小さい​係数でも、​短い​残存効果と​大きい​係数でも、​同じ​データを​説明できる​場合が​あります。​既知の​チャネル​特性に​基づく​事前分布が​推定を​支えます。

長く​残る​効果は、​無料の​売上ではありません。​今四半期の​売上の​一部は​前四半期の​広告費に​よる​ものです。​減衰の​遅い​チャネルの​削減は、​影響が​遅れて​現れます。​計画には、​いつ影響が​見えるかも示す必要が​あります。

Weibull型は、​ピークの​時期を​推定できるだけの​週数が​必要です。​短い​データでは​ノイズに​適合しやすくなります。

通常、​減衰率は​週単位で​示します。​日次モデルでは​λ^(1/7)に​換算します。​そのまま​使うと、​残存効果の​長さを​誤って​表現してしまいます。

よく​ある​ご質問

チャネルごとの​減衰率の​目安は?

検索・​メールは​速く、​λは​約0.1〜0.4で​半減期は​1週間未満。
​ソーシャルは​0.3〜0.6、​ディスプレイ・ラジオは​0.5〜0.7程度。
​テレビ・屋外広告は​0.6〜0.9と​長く、​半減期は​約2〜6週間が​目安です。
​これらは​事前分布であり、​モデルの​学習で​自社データに​合わせて​更新されます。

幾何減衰型と​Weibull型は​どう​使い​分けますか?

標準は​幾何減衰型です。
​Weibull型は​パラメーターを​1つ​加え、​出稿後に​効果の​ピークが​来る​形を​表せます。
​テレビに​よる​認知やPRなど、​遅れて​ピークが​来る​根拠が​あり、​追加パラメーターを​推定する​ための​40週以上の​データが​ある​場合に​使います。

アドストックは​チャネルの​総効果を​変えますか?

アドストックは、​まず​効果の​時間的な​広がりを​表します。
​推定される​総効果には​係数、​飽和、​正規化も​関わります。
​効果の​帰属では、​この​広がりが​重要です。
​減衰の​遅い​チャネルは​出稿していない週にも​効く​ため、​アドストックが​ない​モデルは、​その​効果を​当週に​出稿した​チャネルへ​割り当ててしまいます。