限界インクリメンタルROAS
限界iROASは、追加する1ユーロが生む純増売上に注目します。
広告がなければ発生しなかった売上だけを対象に、次の予算をどこへ配分するかを考えます。
7 分で読めます · 更新日 2026年9月7日
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Aは平均が高い一方、次の1ユーロのリターンは0.9倍。
Bは平均が低くても限界リターンは3.1倍です。
この場合、AからBへの予算移動が有力です。
どのような手法か
ROASは、チャネルに割り当てられた売上を広告費で割った値です。限界インクリメンタルROASは、そこに2つの修正を加えます。
インクリメンタルとは、広告がなければ生まれなかった売上だけを対象にすることです。「広告がなくても起きたはずの売上」は、媒体効果とベースラインを分けるモデルや、広告を出さない対照群を設ける実験で推定します。
限界とは、全広告費に対する平均を、現在の投資水準での傾きに置き換えることです。次の1ユーロが生む売上を表し、反応曲線では原点からの線ではなく接線に当たります。
次の予算をどこに投じるか。その順位付けと再配分に使う指標です。
メディアプランに必要な理由
再配分は、Aに追加する1ユーロとBに追加する1ユーロの比較です。平均には、まだ飽和していなかった頃の投資も含まれます。純増効果の平均も、あくまで平均です。この判断に必要なのが限界iROASです。
チャネルが次の投資先として有効なのは、限界iROASがブランドの損益分岐点と代替案を上回るときです。過去には成功したチャネルが、現在の配分では適切でない場合もあります。
仕組み
学習済みのMMMから、チャネル別の売上反応曲線を得ます。確定した広告費xでの限界リターンは次のように近似します。
marginal iROAS(x) = ( revenue(x + δ) − revenue(x) ) / δ
δは小さな追加額です。事後分布の各サンプルで計算するので、不確実性の幅も得られます。モデルの売上はベースライン、季節性、統制変数を考慮した媒体貢献であり、純増効果の考え方が組み込まれています。
実験では、テスト群の純増売上を広告費で割り、試した投資水準でのリターンを直接測ります。これは試験範囲の平均であって傾きではありませんが、実測値として、その点のモデル曲線を較正します。
実務では、限界iROASで順位を付け、低いチャネルから高いチャネルへ予算を移します。傾きがそろうか、予算上限やモデルの観測範囲に達したところで止めます。
Kuwalystでの使い方
Operate画面では、確定支出の隣に限界iROASと状態を表示します。計画以上に支出し、限界リターンが0.9倍のチャネルは、ダッシュボード上のROASがよくても計画外と判定します。追加投資が支出額を下回る売上しか生まないためです。
Tuneの提案額は傾きから決めます。「AからBへ15%移す」という提案には、両者の限界リターン、Bが飽和に近づくまでの移動可能額、予測効果と幅を添えます。傾きが不確かすぎる場合は、地域ホールドアウトなどの測定を提案します。
数値には必ず分類を付けます。曲線から得たものは予測値、実験から得たものは実測値、自社履歴がなく公開値を使う場合はベンチマークです。
注意点
定義を混ぜないこと。あるチャネルのプラットフォームROASと、別のチャネルのiROASは異なる量です。ベンチマーク集とプランでは、分類を表示して混同を防ぎます。
広告費の水準を示すこと。限界リターンは、曲線のどこで読むかによって変わります。
短期の傾きと長期のブランド効果を区別すること。4週間の窓では、数か月かけて効果が出るチャネルを過小評価します。アドストックで一部を扱えますが、遅れて現れるリターンの割合も示す必要があります。
順位付けの後は検証を。曲線が不確かなら順位も不確かです。最上位のチャネルは、まず実験で確かめる候補です。
製品での活用例

確定支出と計画額、限界iROAS、順調・要注意・計画外の状態を表示。